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ジーンとくる話

車の窓から捨てられた子犬たちの養母となった犬

生まれた3匹の子犬のうち2匹が亡くなって以来、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの雑種ブロッサムはすっかり気落ちしていました。食欲を失い、無気力に横たわり生きる気力も無くしてしまったようでした。そんなブロッサムが再び元気を取り戻すきっかけとなったのは、突然この母犬のもとに舞い込んだある依頼でした。

2017年5月、当時妊娠中だったブロッサムは犬糸状虫(犬の心臓に寄生する糸状虫)に感染していることが判明します。ブロッサムの元飼い主は無情にも保護施設に置き去りにしたまま、2度と顔を見せることはありませんでした。臨月のブロッサムはただちに看護ステーションに送られ、出産に臨みました。看護師が見守る中、ブロッサムは3匹の子犬を産み落としました。一見、健康そうに見えた子犬たちでしたが、出産から数日後、後子宮内で感染したと思われる感染症により2匹が死亡しました。

我が子を失ったブロッサムの嘆きは大きなものでした。悲しみのあまり食事も喉を通らないありさまだったのです。しかしそんなブロッサムを絶望の淵から救うある出会いが待ち受けていました。それは数日前に走行中の車から捨てられ施設に保護された生後間もない兄弟犬でした。兄弟犬8匹のうち助かった6匹を養育するため、施設の飼育係は子犬たちをブロッサムに引き合わせたのでした。しかしブロッサムと生き残った実子のバターカップを他の6匹と一緒にすることはリスクを伴うものでした。なぜならその当時、獣医はまだブロッサムの2匹の子犬の死因を突き止めておらず、生まれて間もない6匹に未確認のウイルスが感染する危険性があったからです。また一方で、6匹が何らかの深刻な病気を抱えており、生き残ったバターカップに感染してしまう可能性がないわけでもありませんでした。

生後間もなく捨てられた6匹、兄弟を失くしたバターカップ、どちらにもリスクのある試みでした。それでも全ての子犬が生き残るためには、他に有効な選択肢はありません。

ブロッサムと6匹の子犬を面会させた世話係のマギー・ エスクリバは、実の子を失って間もない母犬がどのようにこの状況に対処するのか興味がありました。子犬のか細い鳴き声を聞くなり、ブロッサムは子犬たちに添い寝すると、1匹1匹を舌で舐め毛づくろいをしてやり、授乳させたのです。

そして8週間後、すっかり元気に成長した子犬たちは無事に新たな飼い主のもとに引き取られていきました。授乳中は投与された薬物が母乳を通して子犬に影響を及ぼすため、見送られていた犬糸状虫の治療もすぐに始まりました。

「ブロッサムの心優しさに胸を打たれました。大きな喪失の中にあったにもかかわらず、孤児犬の母代わりとして愛情を注ぎ子犬たちの命を救ってくれました。助けを必要とする誰かに救いの手を差し伸べることによってブロッサム自身も悲しみも癒されていたのです」とマギー・ エスクリバ。

産後間もなく2匹の実子を失い、悲しみに打ちひしがれていたブロッサムでしたが、6匹の子犬の養母としての役割を献身的に果たしました。子犬を救うことは同時にブロッサムに生きる希望を与え、子供を失った喪失感を克服するきっかけとなりました。

犬糸状虫の治療終了から2週間後、ブロッサムもまた新たな家庭に引き取られました。現在、第二の人生(犬生)を送るブロッサムが幸せでありますように!