ガンに侵された老犬が新たな家まで、640キロのフライト

世界の多くの施設で保護された多くの犬が暮らしています。虐待や飼育放棄、野良犬などの理由で保護された行き場のない犬は、施設で生活しながら新たな里親に引き取られるのを待つのです。

保護犬の年齢は子犬から老犬まで様々ですが、大抵の場合、子犬は比較的引き取り先が見つかりやすく、老犬はそのまま施設で一生を終えるケースがほとんどです。しかし、中にはこうした恵まれない環境にある老犬に救いの手を差し伸べる人もいます。

米国ノースカロライナの施設に保護されたメスの老犬アシュリン。入所後、短期間で体重が大幅に減り、体調が悪化してしまいます。悪性の腫瘍が皮膚の下に形成され、急速に身体中に転移していたのです。「あと数週間ももたないだろう」アシュリンの世話をする誰もがそう思いました。

アシュリンの境遇に心を痛めた施設職員は、アシュリンが最期の数日間を施設の外で過ごすことができるよう、ネットを通して呼びかけました。温かな家庭に引き取られ、せめてわずかなひとときでも愛情を実感してから寿命を全うしてほしい、そう考えたのです。

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アシュリンを無事に引取先に移動させるため、助っ人として名乗りを上げたのが趣味でパイロットとして活躍するコンピューター科学者ポール・シュテクレンスキーでした。アメリカでは保護施設の過剰受け入れを防ぐため、引取先の見つかる見込みのない犬は安楽死させられます。安楽死の運命にある犬にも愛情豊かな飼い主のもとで幸せな生活を掴むチャンスを与えたい、との願いからポールは動物にストレスを与えることなく新たな住居に飛行機やヘリで移動させることを目的とする組織「Flying Fur Animal Rescue」(空飛ぶ動物レシキュー)を2015年に設立。ポールは年間10,000ドル(2019年6月現在、約108万円)を自費で、残りを寄付金を募り、動物の安全な空の輸送活動を続けているのです。

「日々、多くの健康で愛らしい動物たちが引き取り手が見つからないという理由で安楽死処分させられている。でも、どんな動物にだって里親に巡り会うチャンスはあるんだ。動物愛護団体とのネットワークと支援者たちのおかげで、安楽死が待ち受けている施設から里親を希望する引取先にまで動物を届けることができる」とポール。

2018年1月23日、ポールとアシュリンを乗せた小型機はノースカロライナからニューヨークに向けて飛び立ちました。2時間半のフライトの間、アシュリンはポールに徐々に心を開いていき、最後にはポールの膝の上で安心して眠り込んでいたそうです。

ニューヨークに到着すると、アシュリンは空港で待ち受けていた新たな飼い主のトレーシー・ランダーに引き渡されました。アシュリンはすっかりトレーシーと打ち解けた様子でした。

トレーシーのもとで穏やかな生活を手に入れたアシュリンは再び体重も増えているそうです。トレーシーの家に以前からいる2匹の犬ともすぐに仲良くなり、すっかり馴染んでいるとか。余命数週間と推測されていたアシュリンは現在もトレーシー宅で幸せに暮らしています。飼い主に愛情を注がれ、安全な飼い犬として当然の生活をようやく満喫することができたのです。

ポールやトレーシーのような人が増えれば、今後安楽死の処分を受ける動物の数も減少するのでしょう。動物だって、年齢に関係なく生きるチャンスを掴む権利があるのです。

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