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18歳の娘を歯科手術後に失った母親

アシュリン・マリー・キャノンはアメリカ・サウスカロライナ州で何不自由なく暮らす、ごく普通の18歳の少女でした。これからもずっと幸せに元気に暮らしていく、アシュリンの輝かしい未来を誰も疑うことはありませんでした。まさかこんなに早い展開で天地を逆転させたかのような変化が起こるとは想像さえできなかったでしょう。

高校生活最後の年、アシュリンは毎日を惜しむかのように勉強にスポーツに精一杯打ち込み、翌年の大学進学に向けた準備をしていました。

この日、アシュリンは疼き出していた親不知の歯を、誰もがそうするように手術で抜いてしまいました。手術が終わり、病院のベッドで眠るアシュリンの元にアイスクリームを持って様子を見にった両親は、娘の元気そうな様子にホッとしていました。

すると、アシュリンの友人が病室を訪れます。アシュリンの母親アンジーは、この友人のことをよく思っていませんでした。彼女は薬物を使用しており、度々問題に巻き込まれているというのを知っていたからです。しかし、しっかりした我が娘に限ってそんな問題に巻き込まれることはないと、それほど心配していなかったと言います。それで2人を残してアンジーは病室を去ったのです。この判断を、後に母親は激しく後悔することになります。

病室を訪れた友人は、この日アシュリンに恐ろしいプレゼントを持ってきていました。ヘロインです。抜歯手術直後でまだ麻酔が切れておらず、いつも通りの正常な判断ができない状態のアシュリンに、一緒に吸おうと誘いかけていたのです。

その後数ヶ月間、表面的にはそれまで通りの生活が続きました。しかしアンジーは何かがおかしいと感じ始めていました。アシュリンの成績は急降下、いつも寝てばかりいて外見を気にしなくなっていたのです。得体の知れない嫌な予感がしていました。

2016年3月、不安を募らせていた両親に、アシュリンの同級生の1人がようやく彼女に何が起こっているかを告げました。アシュリンはヘロイン中毒者になっていたのです。

パニックになりそうな気持ちを抑えながら、両親はアシュリンに本当のことを話してくれるよう説得します。アシュリンはこれまでの経緯を洗いざらい告白しました。両親はすぐに娘をリハビリ施設に入所させ、中毒から立ち直るために全力を尽くそうと決心します。

2016年夏、最悪の時期は過ぎ去ったかのように見えました。アシュリンは施設を退所したのです。高校は中退せざるを得ませんでしたが、弟のカーデンと多くの時間を過ごし、仕事を見つけ、薬物とは縁を切るべく新たな生活のスタートを切りました。

しかしヘロインは、そう簡単に過去のものにできるような薬物ではありません。断ち切ろうとしては挫折を繰り返していました。何度裏切られても、禁断症状に苛まれる娘を家族は支え続けましたが、家族の精神状態も限界を迎えていました。アンジーは、娘にどれほど愛しているか、どれほど信頼しているかを諦めず伝え続けました。

しかし、何をやっても効果はありませんでした。苦肉の策として、不本意ながらもアンジーは我が子を精神病院に入院させることを決意。ところが、病院のカウンセラーは、アシュリンを強制入院させるより、本人の意思を尊重した方が良いと言います。この措置はこの時のアシュリンにはすでに遅すぎるものでした。

2017年10月4日、友人と外出したアシュリンはアンジーに心配しないでとテキストメッセージを送ります。しかしこの夜、アンジーはドアの呼び鈴で目を覚ますことになります。ドアを開けるとそこには警察官が2人。娘がヘロインのオーバードーズで命を落としたことを告げられたのです。

悲しみと怒りとやるせなさで我を失いかけたというアンジー。娘の19歳の誕生日に、娘を棺に入れねばなりませんでした。

アンジーは、この悲しすぎる実話をインターネット上に公開し、人生をスタートしたばかりの娘の身に何が起こったのか、できるだけ多くの人に読んで欲しいと言います。

アシュリンの死は一家の誰もの心に大きな傷跡を残しました。深い傷が癒えることはないかもしれません。しかし遺族は、このエピソードを公開したことで1人でも多くの尊い命を薬物から救えればと祈っています。