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えらい

【癌との闘い】55時間も水中で過ごした男性

陸上で暮らす生物は水中で長時間過ごすことはできません。たとえカワウソやヌートリアなど、水辺で生息する動物でも水中でも数時間水に浸かった後は陸に上がって体を乾かす習性があります。しかし37歳のオランダ人スイマー、マールテン・ ファンデルバイデンは例外でした。なんと2日間以上も水中に入ったまま、泳ぎ続けたのです!

水泳の才能に恵まれ、若くして将来有望なスイマーとしてオリンピック出場を有望視されていたマールテン。しかし19歳当時、アスリートとしての彼の夢はついえたかに見えました。マールテンは白血病に蝕まれていたのです。生存の見込みは低いとの医師からの宣告。

しかし驚くべきことに若きスイマーは白血病を克服し、病の宣告からわずか2年後にはプールに戻ったのでした。そして2008年の北京オリンピック、マールテンはオープンウォータースイミング競泳で見事、金メダルに輝いたのです。

今回、マールテンは大きな危険を伴う挑戦に出ました。11都市を周り各都市の運河や河川を200km泳ぐ予定でした。この試みの背景にはアスリートとしてのチャレンジだけでなく、癌の研究のための資金を集めるという大きな目的がありました。

壮大な水泳ツアーのため、3日間の予定が組まれましたが、合間にわずかな休憩時間を挟んだ強行スケジュールでした。水中に入ること55時間、163kmを泳いだマールテンでしたが、体調を崩してしまいます。

予定していた運河の中には排水が流れ込むものもあり、水質汚染が著しいためマールテンが泳ぎ続けることは困難な状態だったのです。結果、目標としていた200kmには惜しくも届かなかったものの、350万ユーロ(2018年9月現在、約4億5千万円)もの寄付が癌研究のため集まり、キャンペーンは大成功に終わりました。

白血病により死を宣告されながらも見事生還し、努力に努力を重ね輝かしい実績を残してきたマールテン。超長距離水泳で疲労困憊、さらに長時間水中にいたことで手足の皮膚はすっかりシワシワになっていました。

自らに使命を課し、見事キャンペーンを成功に導いたマールテンの強い意志は多くの人々に感銘を与えました。目標の200kmには届かなかったものの、マールテンは今回の結果に非常に満足しています。とりわけ、大きな目標に挑むことによって多くの善意の寄付を集めることができたことは、元癌患者であるマールテンにとって何よりも大きな成果だったようです。