【リアル版モーグリ】7歳で狼に引き取られ、12年間一緒に生活した少年

ディズニー映画でお馴染みの「ジャングル・ブック」。赤ちゃんの頃 ジャングルに置き去りにされ、狼家族に育てられた少年モーグリの物語です。

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映画はラドヤード・キップリングの小説作品を原作としており、完全なフィクションです。しかし、広いこの世界には実際に捨て子が自然界で野生動物によって育てられたという世にも珍しい事例が複数報告されています。マルコス・ロドリゲス・パントーハも野生動物によって育てられた人間の1人です。マルコスは12年間、狼と一緒に暮らしていました。

マルコスが3歳のとき、母親が兄弟を出産した際に亡くなります。父親は息子マルコスの養育を拒否、ヤギ飼いに引き取られスペインのシエラ・モレナ山脈で大自然に囲まれ育ちます。しかし、その数年後マルコスを残してヤギ飼いは急死。7歳のマルコスは奥深い山の中、たった1人取り残されてしまったのでした。

そんなマルコスに救いの手を差し伸べたのは狼の群れでした。身寄りもなく1人途方に暮れるマルコスに気が付いた狼たちは彼を洞穴の住処へと連れ帰りました。狼はマルコスに獲物を分け与え、仲間とのコミュニケーション方法や自然界で生きる術を教えました。かくしてマルコスはその後12年間、狼の群の一員として山々を駆け巡る生活を送ります。

19歳のある日、マルコスは偶然にも山岳警備隊によって発見され人間社会へと連れ戻されました。しかし、人間社会への復帰の道のりは厳しいものでした。狼の社会で育ったマルコスの目に人間は冷淡に映り、絶えず疎外感にさらされます。ホテル業界や建築業を転々としますが、どれもうまく行くことはありませんでした。

人間社会に溶け込むことができないマルコス。集団生活を送る人間の中で常に自分は部外者であるという現実を思い知らされる日々を送ります。

現在72歳のマルコスですが、未だに人間社会での生活が苦手です。自分が人生で最も幸せだった時期、それは狼と暮らしていたあの頃だと確信しているほどです。

人間社会に絶望し狼との生活を恋しがるあまり、一度は狼家族のもとへ戻ろうとしたことすらあります。しかしそれは叶わぬ願いでした。

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「確かに、家族はまだあの山にいました。懐かしい遠吠えを聞いたとき、思わず鳥肌が立ちました。でも、家族の姿を見つけることはできなかった。私が呼びかけると、遠吠えで応えてくれました。けれど私のもとへ会いに来ることはなかった。というのも、私はもう人間の臭いを身にまとっていたからです」

狼家族はもう自分を家族の一員としてみなしていない。再会を願うマルコスに突きつけられたのは厳しい現実でした。

マルコスは現在、辺境地の村の小さな家で暮らしています。住民はごくわずか、民家もほとんどない人里離れた村での生活はマルコスにとって、平穏をもたらしてくれるものでした。

狼の群と再び一緒に暮らすことはできないものの、シエラ・モレナ山脈で狼として暮らしたあの日々は今もまざまざと思い出すそうです。

マルコスの数奇な人生は世界中から注目を集め、狼と暮らした人間として数多くの研究対象となり、ドキュメンタリー番組や映画まで制作されました。一躍、時の人となったマルコス。自分の物語に目を輝かせ好奇心いっぱいに聞き入る子供達の姿に、これまで人間が苦手であったマルコスの心に小さな変化が起きたようです。

現在、マルコスは各地の学校を訪れ、子供達に狼家族との暮らしについて語る講演活動に取り組んでいます。

これまで大自然の世界にばかり向きがちだったマルコスに、1人の人間として人間社会で生きる意義を教えてくれたもの、それは子供達の純粋な瞳でした。モーグリさながらの少年時代を送ったマルコス、その不思議な人生は多くの人々の心をとらえてやみません。

「あの頃は本当に、人生が最も輝いていた時間だった。戻れるものなら戻りたい。ボールではなく、岩を素足で蹴るサッカーを動物たちとしていた、あの素晴らしい頃に戻りたいんだ」

狼として育ち、人間社会で生きることを強いられたマルコス。その苦悩が伺える言葉です。

出典

El Paisunilad

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