ちえとくをフォローする

レスキュー

男性はある晩停車中の車内に猫を発見した。しかし猫がフロントガラスをなめた時あることに気がつき慌ててその場を駆け出した

いつものスーパーまでの道、通勤や通学路など、毎日何気なく通っている道は、馴染みの風景だからこそちょっとした変化に人は敏感になるのかもしれません。京都に住むドイツ人男性ファビアンさんは通い慣れた道で、ある異変に気がつきました。

その道には元工場と思われる建物の前にしばらくの間、2台の車が置きっぱなしになっていたそう。1月5日、その日たまたま自転車を押して歩いていたファビアンさんは、2台のうち1台の車内で動く「何か」を見ました。それはなんと1匹の黒猫

Facebook/Pawer.

近寄って確認すると、そこには必死にフロントガラスを舐める猫の姿が。その様子にファビアンさんは猫が喉を乾かしていると思い、飼い主がいないか辺りを見回しました。

しかし車内はゴミ袋だらけ。元工場と思われる建物のシャッターはずっと閉まったままで、車の持ち主が住んでいる様子もありませんでした。

Facebook/Pawer.

「この猫は相当長いこと、車に閉じ込められているはず」そう確信したファビアンさんは、急いで日本の友人と一緒に警察署に行き状況を説明したそうです。

ファビアンさんの母国ドイツでは、このような場合は消防署か警察に通報すれると、すぐにレスキューに駆けつけ、窓ガラスを割ることも躊躇しないのだそう。

しかし、相談した警察署でも愛護センターでも、人命がかかっているならいざ知らず、猫の飼い主(所有者)に無断で車から出すことはできず、法律では救出した場合、猫を飼い主から盗む行為に当たるという返答が…。

ドイツの実家で猫を2匹かうファビアンさんは、「人命ではないから」「人の所有物だから」という返答に驚きを隠せませんでした。

それから3日後、ファビアンさんが他の動物保護団体へ連絡をし、京都市内で動物保護活動をしている女性とともに再度警察を訪れたそうですが、やはり動いてくれることはなく…。そして女性がSNS上で車内に閉じ込められた猫を助けたいと呼び掛け、たどり着いたのが京都市内で長年、不妊去勢手術をした猫に耳カットを施してきた「ぜろの会」。

発見から4日目の1月9日「ぜろの会」の女性が猫を確認したところ「ぐったりしていて、つり上がったうつろな目。あと3日」という危機的状況だったとのこと。

しかし、110番通報後にやってきた派出所の警官も今までと同じ対応をとったのです。業を煮やした女性が「早くしないと死んでしまいます!」「私が引き取って治療しますから、すぐ持ち主と連絡をとってください」と譲らなかったところ、ようやく警察から「所有者を探します」との返事を得ることができたのです…。

それからの警察の対応は迅速。車は古くて未登録だったため所有者の親族を探し出し猫の所有放棄をしてもらい、ようやく車を開けてもらうことに。当の車の所有者は老人で、昨年12月5日に認知症もあって入院していたそう。猫を飼っていた形跡はなく、猫はおそらく老人に餌をもらっており、老人がゴミを放り込んだ際に入り込んだようでした。このことから少なくとも猫は12月5日以降車内に閉じ込められていたのです。

救出時、猫は動揺からか怒っていたそうですが、なんとか救出され病院へ運ばれました。猫はガリガリに痩せ細り、自らが出した尿から蒸発した水分が冬場の冷え込みでフロントガラスに結露するのを水分として舐めて生き延びていたそう。

「マリちゃん」と名付けられたこの猫、救出時はわずか1.7キロだった体重が倍の3.4キロになり順調に回復。幸いにも内臓にダメージもなく現在は元気いっぱいとのこと。よほど心細い思いをしたのか、恩人のファビアンさんや保護団体の女性の膝からなかなか離れません。

「こういった閉じ込め事案は、どこでも、誰の周りでも起こりうること。そうならないために、マリちゃんのことが広く知られてほしい」と、ファビアンさんはコメントしています。

高齢化が進む、日本。飼い主の入院や死による、猫や犬と言ったペットの取り残され事案の多発防止がこれからの課題になりそうです。もしもの時に備え、家に犬や猫のいることを知らせる情報カードを持ち歩くことや、地域社会で声を掛け合い命を守るためのセーフティーネットを作っておくことが大切と保護団体の女性は言います。

閉じ込められた車内で必死に生き延びたマリちゃん。この先の猫生では、もうこんな辛い思いをすることがありませんように。