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頑張った5歳の子の、最期の数時間に付き添う親の姿

ゾーイ・キャサリン・ダゲットの脳に腫瘍が見つかったのは、わずか3歳の時でした。

アメリカ・ニューヨーク州フェアポートに暮らすゾーイは、2016年7月、公園で遊んでいて転んでしまいます。立ち上がってから、足を引きずって歩くのを不審に思った両親のキャスビーとベンは、ゾーイを病院に連れて行きます。足首をひねったのか、最悪の場合骨折かもしれないと両親は心配していましたが、結局レントゲンを撮っても傷は見当たりません。

時間が経過するごとに、ゾーイは足のコントロールを失っていくようでした。そして1週間後には手さえも動かせないほどに悪化していたのです。転んだ怪我が原因ではないことは明らかでした。全身をくまなく検査した結果、医師が見出した原因は衝撃的なものでした。

病名は小児脳幹部グリオーマ(DIPG)。主に5歳から10歳の子どもに発生する脳腫瘍の一種で、脳幹部に直接発生するため、外科手術は不可能です。化学療法や放射線療法が行われますが、完治を目指す治療法は現在のところ存在しません。

1年生存率は50%と言われる難病に、ゾーイは2年間立ち向かいました。膨れ上がる治療費をなんとか捻出しようと、一家の友人がインターネットで寄付を募ると、短時間で46,875ドル(520万円ほど)が寄せられました。

いつもゾーイの隣にいたキャスビーとベン。娘が生きていた証を残したいと、腕にゾーイの声の音声波を模したタトゥーを掘りました。キャスビーの腕には「大好き」、ベンの腕には「今日はやめておこう」のゾーイの声が刻まれています。

放射線治療を続けていましたが、腫瘍は少しずつ成長していました。2018年7月、ついに両親はゾーイの余命1週間との知らせを受けます。

その日、ゾーイはお気に入りの映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を両親と愛犬と一緒に見ていました。映画が終わる前に、ゾーイは両親の腕の中で静かに息を引き取りました。

我が子の死を看取ることほど親にとって辛いことはないでしょう。でも最後の瞬間までずっと両親に愛されていたことをゾーイはわかっていたはずです。きっと心安らかだったことでしょう。そしてゾーイは永遠にキャスビーとベンの中で生き続けます。ご冥福をお祈りします。